06.「楽な内視鏡検査法を目指して」 ~『予防する医療』への意識改革を!その6~
胃カメラは「のどが苦しい。えずく。せき込む。」などのため、非常にしんどい検査です。
しかし、胃がんになって苦しむのはもっと辛いため、皆さん我慢して検査をされています。前回書いたように、細い内視鏡を鼻から入れる経鼻内視鏡は鼻血が出ることを除けば割と楽に受けられるのですが、画質が悪いため、治るような小さな食道がんや胃がんを見落とす可能性が高くなってしまいます。
口からの経口内視鏡を楽に飲むための方法は色々とありますが、のどの麻酔法の工夫や、呼吸の仕方の指導、最小限の動きで丁寧にカメラを動かすことなどで、ある程度、楽に検査ができます。
しかしもっと楽に検査をする方法としては、睡眠薬の点滴で「静脈麻酔」をして眠りながら検査をする方法です。検査中のことはほとんど記憶になく、楽に検査を受けることができます。
ただしこれはどこでもできる方法ではなく、また目が覚める時に吐き気が出る人もあり、その日は1日中睡眠薬の影響のため、車両の運転は禁止です。病院からの帰りも付き添いを必要とします。
どの方法でするかは、えずきやすさによりますが、一般に若い人ほどえずきやすく、胃カメラがしんどい傾向にあります。反対に大腸カメラは、若い人ほど楽に受けられます。若い人の腸はやわらかく張りもあるため、カメラを入れていきやすいためです。
しかし高齢のかたの腸は、硬くなったり、張りがなくなり伸びてしまったりするために、カメラを入れていくことが難しくなります。大腸カメラを痛みなく入れていくには、腸を伸ばさない、ねじらないようにすることが必要で、これは内視鏡医のテクニックによります。
上手に検査をすれば胃カメラより大腸カメラの方が楽ですが、痛い大腸カメラを受けた方は「お産のように痛い」と言われます。どうしても痛いかたや怖いかたは、大腸カメラでも静脈麻酔で眠りながら検査することもできます。
もっと気軽に胃カメラ・大腸カメラ検査を受けていただき、胃がん・大腸がんで亡くなる方を一人でも少なくしたいと、楽に内視鏡検査をする工夫を日々考え続けています。
(「くすぐる診療所」2012年9月号より改訂)