お知らせ

017.『救急疾患編』 その2「熱中症」

 今年は7月初旬に梅雨が明け、早くも熱中症の時期がやってきました。7月になってから毎日の様に熱中症と見られる患者さんが救急搬送されて来ます。
  
 中には死亡されるケースもあります。主にはご老人が多いですが、運動をしていた子どもの搬送も多いです。
 ご老人はのどの乾きや体温の上昇を感じにくくなっているため、暑い部屋でもクーラーもつけず水分も摂らずに過ごし、知らず知らずの間に熱中症になられるケースが多いです。

 クーラーや扇風機の使用、風の取り入れを積極的に行い、こまめな水分補給と塩分補給が必要であることはテレビのニュースでも連日報道されています。また、ご老人の場合には単純な熱中症でない場合も多く、脱水症状が原因で尿路感染症や脳卒中を起こされたり、暑い中しばらく置いていた食べ物で食中毒を起こしたりして、熱中症以外の病気を併発している場合があります。周囲の人が「意識はしっかりしているか?」「体温上昇はないか?」などご老人の管理をしてあげる事が重要です。

 また子どもさん達の熱中症は、暑い校庭や体育館でのスポーツ中に起こることが多いです。水分を摂る事は言うまでもありませんが、時間を決めて風通しの良い日陰で休憩し、首筋や脇などをしっかりと冷やしましょう。
 熱中症のなり易さの指標は温度だけでなく、湿度、輻射熱(ふくしゃねつ)(*注5)をあわせてWBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)で数値化されており、日本体育協会の指針ではWBGT:21℃以上から徐々に熱中症で死亡する危険性が高まり、WBGT:31℃以上での運動は禁止とされています。

 また環境省から熱中症予防情報がインターネット上で毎日出されて暑さ指数および危険度を知ることができます。さらにWBGT測定器は市販でも購入可能です。WBGT指数が高いと屋外での生徒の運動を中止し、大型扇風機を付けた体育館での運動に切り替えることを義務化して熱中症の救急患者ゼロを守っている市町村もあります。
 医療だけでなく行政も事故が起きてから対応するのではなく、事故を想定した対策を講じる必要があると思います。暑い中でのスポーツや行事などについて今一度熱中症対策を検討してみましょう。


*注5) 輻射熱(ふくしゃねつ):遠赤外線の熱線によって直接伝わる熱の事。つまり、高温の固体表面から低温の固体表面に、その間の空気その他の気体の存在に関係なく、 直接電磁波の形で伝わる伝わり方を輻射といい、その熱を輻射熱といいます。太陽の自然な暖かさや、薪ストーブの熱なども輻射熱によるもの。


(「くすぐる診療所」2013年8月号より改訂)

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