018.『予防する医療』への意識改革を!その14「これからの医療はどうあるべきか?」
2012年の日本人の平均寿命は、男性が79.9歳、女性が86.4歳で、男女平均83歳(*注6)はサンマリノ、スイスと並んで世界第1位です。しかし今後、喫煙率の高い日本は他の喫煙率の低い国々に追い越されると予想されています。
都道府県別では、最近男女共に長野県が最も長寿の県となりました。これまでは沖縄が男女ともに長寿1位でしたが、沖縄の男性寿命は現在30位とむしろ下位に急転落しています。これは「沖縄クライシス」と呼ばれ、沖縄の食生活の急速な欧米化、特に男性のメタボ・肥満・糖尿病が非常に増えたことが原因と言われています。
現在丹後地方は長寿のご老人が多いですが、最近の若い人にはメタボ・肥満が非常に増えており、今後は丹後地方も沖縄のようにならないかと不安を感じます。逆に長野県は、過去には漬物文化のためか胃がんや脳卒中が多くて、決して長寿の地域ではありませんでした。しかし佐久総合病院の若月医師らが中心となり、医療と行政、地域住民が一体となって減塩運動を普及させ、全国で先駆けて集団検診を導入し、生活習慣病の予防やがんの早期発見のために様々な努力を重ねた結果として長寿を獲得しました。
さらに長野県は大病院が多い訳でもなく、老人1人当たりの医療費は全国平均と比べても非常に低く、濃厚な医療により長寿になっている訳でもありません。つまり大切なのは病院や医者の多さではなく、『住民1人1人の健康意識の高さ』にあるのです。
長野県佐久市のピンコロ地蔵には全国からの参拝者が絶えないそうですが、「ピンピンコロリ=ピンコロ」という言葉は「生きている間はピンピンと元気で、大病にかからずコロリと天寿を全うする。」という意味で、日本人の大半がこのようなピンコロ死を希望しているという調査結果も出ています。
超高齢化社会の到来と医療財源がひっ迫している現在、長野県のように予防医療に重点を置くことが必要ではないでしょうか?このような取り組みは全国的に広がりつつあり、次回は北海道夕張市で行われている予防医療の最先端「ささえる医療」についてお話します。
*注6) 2017年平成29年の簡易生命表によると、日本人の平均寿命が過去最高を更新して、男性は「81.09歳」で香港、スイスに続き第3位、女性は「87.26歳」で香港に次いで第2位となりました。ちなみに太平洋戦争間もない1947年の日本人男性の平均寿命は50.06歳、女性は53.96歳でした。現在でもアフリカの国々では平均寿命50歳代という所が多くあります。
(「くすぐる診療所」2013年9月号より改訂)