お知らせ

029.『熱中症と脱水症・貧血の関係』

 今年もまた暑い夏がやって来て熱中症の季節となりました。
 
 最近はテレビなどでも連日のように熱中症への注意喚起がなされるようになりましたが、まだまだ救急車で運ばれてくる方が多いのが実情です。しかし福島の原発事故以来、電力不足が深刻となり節電の必要性が叫ばれる様になったためか室内で熱中症になられるご老人も多いです。
 この熱中症には必ずと言っていいほど「脱水症」という体内の水分不足状態が付随しています。これは体が熱くなると体を冷やすために汗がどんどん出て蒸発し、体から水分が急激に失われてしまうからです。暑い屋外でのスポーツや肉体労働だと一日数リットルもの汗が出ます。また水分と同時にナトリウム=塩分も汗から失われるため、塩分を含んだ水分摂取が勧められます。
 
 スポーツドリンクには糖分に加え塩分が含まれていますし最近はジュースやアメなどでも熱中症対策用に塩分を含んだものが発売されています。熱中症になると水分が奪われて脱水症がひどくなり意識が遠のく場合があります。これは血液中の水分が大幅に減ることで血圧が下がり酸素が十分に脳や体に送れない酸欠状態となるためです。

 このように意識が遠のくことを「貧血」と言う人も多いのですが、医学的には「脱水症」と「貧血」は全く違った状態です。貧血は血液中のヘモグロビン:Hbの濃度が減少することを言います。出血や他の病気でHbが減るとHbの働きである酸素の運搬が十分にできなくなり、結果酸欠状態となって意識が遠のきます。

 それに対し脱水症の場合はむしろHbの濃度は高くなります。Hbの濃度が高くても血液の量自体が減るために酸欠状態となるのが脱水症です。そのため貧血の人が脱水症を起こすとより重症になってしまいます。そのためご自身の体調に合わせた温度管理、水分・塩分補給を心がけることが重要なのです。


(「くすぐる診療所」2014年8月号より改訂)

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