030.「たばこ」の話-その1
「たばこ」が健康に悪いことは多くの人が知っていますが、それでもたばこを止められない人が今でも大勢います。
一般的には「たばこは肺がんになりやすい」と思われています。確かに医学的にはたばこは扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんという種類の肺がんになり易いことが分かっていますが、肺がんの半分以上を占める腺(せん)がんとの関連性はそれほど高くありません。実際たばこを吸わない女性やご老人でも腺がんになることがあるため、吸わない人も肺がん検診を受けるなど注意が必要です。
さらにたばこは肺がんの原因だけではありません。主なものでも、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、心筋梗塞、脳梗塞ASO (閉塞性動脈硬化症)、高血圧、糖尿病と関連がありますし、がんでも肺がん以外に、口腔がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頚がんなどとの関連が指摘されています。さらには歯槽のう漏、骨粗しょう症、うつ病、勃起障害、乳幼児突然死症候群といった病気もたばことの関連が指摘されています。
日本では1960年代には男性の80%以上もが喫煙していましたが、その後世界的に禁煙の機運が高まり最近では日本人男性の喫煙率は30%台に低下しています。ちなみに女性は15%から10%に低下しています。今では喫煙者は少数派なのです。特に若い世代ほど喫煙率が低くなっており、「たばこは格好悪い。臭い。」というイメージになって来ています。(その代わり「危険ドラッグ」に走る若者が増えているとすれば大問題なのですが・・・。)
たばこは脳の神経の先からドーパミンという快楽物質を出す働きがあり一時的に元気が出るのですが、精神的な依存回路を形成してまたその快楽を得たいと思うようになるため、たばこが吸えないとイライラするようになります。とくに若いうちにたばこを始めると依存性が強くなりなかなか止められなくなります。
現在禁煙の治療は、ニコチンパッチという貼り薬と、チャンピックスという飲み薬が保険適応となっています。禁煙外来を行う病院も増えてきていますので禁煙希望の方は各病院の禁煙外来をお確かめの上受診して下さい。
(「くすぐる診療所」2014年9月号より改訂)