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031.「たばこ」の話-その2

 前回はたばこの健康被害について書きましたが、更にたばこの害には「配偶者の肺がんリスクが約2倍増える」「子供が喘息や肺炎になり易い」「老け顔になる」「10年寿命が短くなる」など他にも数多くあります。
 たばこの煙には約4000種類以上もの化学物質が含まれており、60種類もの発がん物質が含まれています。またたばこの煙は大気汚染で有名な「PM2.5」でもあります。

 このように大変悪役のたばこですが、今回はその歴史を見てみましょう。
 たばこの原料となるのはナス科の「ニコチアナ・タバカム」という植物で、南米のアンデス山脈地方が起源と考えられています。
 またメキシコ・ユカタン半島にあるマヤ文明のパレンケ遺跡には、たばこをくゆらせる神のレリーフが残されており、当時はたばこから立ち上る紫煙は神々のお告げをもたらすものと考えられたようです。またたばこが部族間の交流の儀式に用いられたり、病気の治療に用いられたりしていました。

 15世紀にコロンブスがアメリカ大陸を発見した時に、現地の部族からの贈り物としてたばこに出会いヨーロッパに持ち帰られました。日本へは安土桃山時代の終わり頃に、ポルトガルやスペインなどとの南蛮交易で、カボチャやジャガイモ、眼鏡や時計、西洋医学などと共にたばこが日本に渡来して来ました。

 江戸時代にはたばこは庶民にとって欠かせない風俗の一つとなり、浮世絵にも数多く描かれています。江戸時代のたばこは細く刻んだ葉たばこをキセルに詰めて吸っていましたが、明治になって現在の形態に近い紙巻き煙草が登場しました。明治になるとたばこは専売制となり、税金がかけられるようになりました。

 戦時中にはたばこは一時配給制となりましたが、終戦時の困窮した国家財政では煙草による税収が約20%もあったと言われています。その後現在のフィルター付きたばこが登場し今に至っているのです。


(「くすぐる診療所」2014年10月号より改訂)

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