079.「がんとは何か?」-その12-がんの検査法は?
前回お話したようにがんの検査法にはいつくかありますが、1つの検査で全てのがんを見つけることはできません。腫瘍マーカーは採血だけで簡単ですが残念ながらがんがあるかどうかやどこにがんがあるかを確定することはできません。がんの有無を確かめるには画像検査で「ここにがんがある」ということを目で見える形に映し出さなくてはいけません。検査は患者さんの体への負担や費用の大きさを考えながら負担の少ないものから進めて行きます。
まず胸部レントゲン検査や腹部超音波(エコー)検査が最も負担の少ない検査で、レントゲンではある程度大きな肺がんが、エコーでは肝臓がん、腎臓がんなどが見つけられます。エコーの長所は細かな所までリアルタイムに観察できることですが、短所は空気があると見えなくなるため肺や腸が邪魔をする場所は見えないことです。
次はCT検査ですが、CTはエコーほど細かい所までは見えませんが、一度に広い範囲を撮影できて見えない部分がありません。胸部CTでは小さな肺がんまで見つけることが出来ます。腹部CTでは造影剤を使うと内臓の中まできれいに映し出されるため、アレルギーや腎不全が無ければ造影剤を使うとより効果的です。腹部CTでは、肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、子宮や卵巣などのがんが見つけやすくなります。
女性特有の乳がんはマンモグラフィーや乳腺エコーを、子宮・卵巣がんなら経膣エコーを行うとより良いでしょう。更に胃がんや大腸がんはCTでも見つけにくいのですが、胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査を行うと非常に早期のものまで見つけることができます。
がんがあることが画像でわかれば可能な限り細胞を採取してがん細胞であることを確かめる病理組織診断または細胞診断を行います。子宮頸がんや肺がんなどは子宮頸部をこすったり、喀痰の中の細胞を顕微鏡で見ることにより小さながんを見つけることも可能です。胃カメラや大腸カメラではがんらしき部分の細胞をつまみ取る「生検」を行ってがん細胞が確認されれば非常に早期の粘膜内がんならば内視鏡で切除することも可能です。
最後に最近注目されているPET検査ですがFDG(標識したブドウ糖類似薬)という薬を注射し、がんがブドウ糖を多く取り込むという性質を利用してFDGが異常に多く集まる部位を映し出してそこにがんがあることを見つける検査です。しかしPETの機械は非常に高額でほとんどの病院には置いて無いことと検査費用も高額なので容易にがんのスクリーニング検査に使うことはできません。また小さな早期がんはPETでも見えないことが多く、逆にがんではない炎症部分がPETで映し出されてしまいがんと見間違うこともあります。それぞれの検査法の長所短所を理解した上で、適切な検査方法を組み合わせて効率よくがんを探し出すことが重要です。