095.「肩凝り(こり)」の話〜その1
私は最近とても「肩こり」で辛い思いをすることが多くなってきました。2015年の厚生労働省・国民生活基礎調査では、何らかの体の症状を訴える有訴者は、男性では1位:腰痛、2位肩こり、女性では1位:肩こり、2位:腰痛と、この2つの訴えが日本人の中では最も多いことがわかります。
実際、肩こりは頸(うなじ)から肩甲骨の下辺りまで広がる「僧帽筋(そうぼうきん)」という筋肉領域のこわばった感じや不快感、凝り感、重苦しさや痛みと言った症状の総称です。肩こりは英語では、stiff neck(硬い首)やneck pain(首の痛み)と言い、stiff shoulders(硬い肩)と言うとむしろ「肩が痛くて上がらない=五十肩」のように聞こえるそうです。この違いは英語のshoulder(ショルダー)は腕の付け根つまり肩関節から肩甲骨辺りを指し、日本語のように首は含まず、首よりも外側の部分を指すからです。
日本では昔は「肩が張る」という言い方が主だったようですが、夏目漱石が新聞連載の『門』という小説で肩が「凝る」という言い方を使ったことがきっかけで日本中に広まったと言われています。日本ではさらに昔、今から1300年前の奈良時代から「揉(も)み療治」つまり「按摩(あんま)」という今で言うマッサージが学問として位置付けられていましたし、日本古来の入浴法「打たせ湯」で、高い位置から肩に温泉を当てることで凝りをほぐす方法もありました。
漢方薬で有名な「葛根湯」の主な生薬である「葛(くず)の根」は、風邪薬として有名ですが、解熱効果だけでなく血行を良くして発汗を促す効果があることから、江戸時代の人々は葛根を煎じて肩こりの薬として飲んでいたそうです。
こんな日本人の多くが昔から悩んできた「肩こり」ですが、原因や診断法、治療法は実際今でも定まったものがありません。原因として考えられるのは、読書やパソコン、最近ではスマートフォンやテレビゲームなどで、首や背中が緊張し続け、猫背や前屈みの姿勢を続けることで、「ストレートネック」または「スマホ首」と言われるように本来の緩やかな首の骨(頸椎)の後ろ方向への湾曲が失われて前方に直線化した状態になることや、眼精疲労や運動不足、年齢による筋肉量の低下、精神的なストレス、片方の肩にかけるショルダーバッグ、高い枕、冷房や血流の悪さから来る冷え、または歯を噛(か)みしめる癖(くせ)や歯軋(はぎし)りなど、様々な原因が挙げられています。
次回も肩こりの治療法、マッサージなどについてさらにお話しして行きましょう。