110.新型コロナワクチンの話〜その3「接種部位の疼痛とワクチンの効果」
私は医療従事者の優先接種ということで先日、新型コロナウイルスワクチン=ファイザー社のコミナティ筋注の1回目を打ちました。利き手とは逆の左上腕の三角筋に筋肉注射をしましたが、打った当初は全くと言っていいほど痛みはありませんでした。接種後15分間は、アレルギー反応が出ないかを観察するために会場に待機していましたが、待機場所はすぐに接種を終えた人で一杯になってしまいました。一度に接種する人数に応じて待機場所の広さを確保することが重要だなと感じました。
その夜就寝後、左の上腕の注射部位がうずくように痛みだし、左を下にして眠ることが困難で寝苦しい一夜を過ごしました。利き腕に打つと日常生活に差し支えるために、反対の腕に打つことが勧められていますが、それでも80%以上の人が訴える接種部の痛みは確かにあるのだと実感しました。それでもその痛みの部位で免疫反応が起きていて、コロナウイルスに対する抗体が作られているのだと想像すると、「効果がありそうだ」と期待が持てます。
2回目の接種の後は、さらに疼痛や体のだるさが強く出るということを聞いていますが、それも1回目で免疫が作られている証しなのだと自分に言い聞かせて我慢するべきなのでしょうね。
さて現在大阪を中心にコロナ第4波が起こっており、より感染力が強く重症化しやすい変異したウイルスが広がっています。日本よりも先に変異ウイルスが広がったイギリスでは、まず1回目の予防接種をなるべく早く多くの国民に行う作戦を取っていて、2回目の接種は最大3ヶ月先にまで延長しています。そのおかげで60歳以上の高齢者の約95%、全国民の約50%が1回目の予防接種を既に終えています。
接種の1ヶ月後には80歳以上の高齢者の重症化を8割以上減らすことができ、コロナ感染が減少し、昨年末から続いていた厳しい外出規制も徐々に解除されています。高齢者も屋外での散歩やテニスクラブなどの活動を再開できるようになり明るい兆しが見えています。
イギリスの2倍近くの人口を有する日本では、医療従事者の先行接種も思ったように進まず、高齢者の接種もようやく始まったばかりです。3週間後に必ず2回目の接種をしなければいけないという規則も、接種が遅れてしまう原因の一つかも知れません。イギリスのように接種間隔に幅を持たせる事で、まず1回目の接種を多くの人に行うという戦略や、感染の多い都市部で優先的に接種を行うなど、ウイルスとの戦いを有利に進めるためには、さらに臨機応変な対応を行うと良いかも知れません。
現在起きている変異株による第4波の被害を最小限に押さえ込むためには、ワクチンを早急に効率良く多くの人に接種する事が求められているのです。
「くすぐる診療所」 (2021/04/20) No.110. 2021年05月号掲載