お知らせ

119.「栄養のお話し」〜その6「お酒の種類と肥満・心筋梗塞の関係」

 みなさん、今年のお正月もおせち料理やお雑煮、七草粥など伝統的な日本のお正月料理を食べられましたか? 日本酒もお正月のお祝いにはつきものですね。

 「お酒」とはアルコールの一種エチル・アルコール=エタノール=酒精(しゅせい)を含んだ飲み物を指し、アルコールにはエタノール以外にも消毒で使うイソプロパノールや、保湿効果があり甘味料や保存料・保湿剤・浣腸として使われるグリセオール(グリセリン)、白樺やとうもろこしなどから作られる天然甘味料で虫歯予防効果のあるキシリトールなど、最後に「○○オール」と名前がつく様々な種類があります。

 飲料としてのお酒にも原料や作り方の違いにより世界中に数知れない多くの種類があり、作り方で大きく分けると、糖分を含む原料を酵母(こうぼ)という真菌類(キノコやカビの仲間)の力で発酵させてアルコールを作らせそのまま飲む「醸造酒(ぞうじょうしゅ)」と、それらを加熱して蒸発したアルコールを再度冷やして濃い液体として抽出する「蒸留酒(じょうりゅうしゅ)」に分けられます。

 醸造酒は麦から作るビール、米から作る日本酒、ぶどうから作るワインなどが代表的で、蒸留酒は麦から作るウイスキーや麦焼酎、米から作る米焼酎や泡盛、ぶどうから作るブランデーなどが有名です。ではお酒の種類と健康との関係はどうなのでしょうか? 「ビールは太りやすい。プリン体が多く、高尿酸血症から痛風になりやすい。」とよく言われますが本当でしょうか?

 西ヨーロッパ6カ国の研究で、ビール・ワイン・蒸留酒を飲む人26万人を調べた研究では、1日あたり1.1合(ビール700ml=ワイン1合( 1合=180ml)=ウイスキーダブル(60ml)=どれもエタノール量で約25g)以上飲む人は太っていくことがわかり、「お酒の種類には関係ない」こともわかりました。しかしお酒を飲む人の方が全く飲まない人よりも心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化が原因で起こる病気にはなりにくいことが世界中で観察されてきました。

 また「赤ワインの中に入っているポリフェノール成分は抗酸化作用があり健康(心筋梗塞予防)に良い」という説があります。ポリフェノールはカカオ=チョコレートにも含まれ最近はポリフェノールを多く含むことを「売り」にしたチョコレートが数多く売られています。これは、ヨーロッパの中でも特に赤ワインをよく飲むフランス人には心筋梗塞が少なく周辺国の中でも寿命が長いことからポリフェノールが良いのではと考えられたのでした。

 しかし、アメリカやデンマークで、ビールや蒸留酒好きの人とワイン好きの人が、お酒と一緒にどのような食事を食べるかを調べてみると、ワイン好きの人が野菜や果物、低脂肪乳をより好んで食べるために心筋梗塞がより起こりにくい可能性があることがわかってきました。つまりどの種類のお酒か? よりもお酒と一緒に「どのような食品を食べるか?」の方が健康(心筋梗塞)に大きく関係していると考えられ、決してワインやポリフェノールが良いということではなさそうです。


「くすぐる診療所」 (2022/01/20) No.119. 2022年2月号掲載

menu