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133.「紫外線UVによる肌の老化現象『光老化』とは?」

 みなさんは「老化」の原因を何だと考えておられますか?
 これまでにも「なぜ『がん』ができるのか?」というシリーズでお話ししたように、私たち地球上の生命はすべて「遺伝子」という生命の設計図:DNAを共通して持っていて、新鮮なうちにその遺伝子DNAを子孫に受け継いだあとには、個人としては遺伝子がどんどん傷つけられて老化してゆき死んで行くことが否が応でも運命付けられています。

 遺伝子がどんどん傷つけられてゆくと、やがて全身の血管が傷ついていったり、各種のホルモンが減少したり、筋肉や骨・免疫が弱くなったり、「がん」になったりという「老化現象」をまぬかれることはできません。しかし、中には私たちを取り巻く環境によって、老化が早められていることも多いのです。

 「酸化さんか」「糖化とうか」「炎症えんしょう」「線維化せんいか」などが老化を早める要因ですが、その他にも地球上の生命とエネルギーの源みなもとになっている太陽の光の中の「紫外線しがいせんUV」は肌:皮膚に当たることで皮膚の「光老化ひかりろうか」を進めるだけでなく、目に当たることで目の老化も進めています。

 私たちの目に見える光線は、太陽から発せられる無数の光線(電磁波)のうち、「可視光線」と言われる380〜770nmナノメートルの波長のものだけですが、それより長い波長には短い方から順に「赤外線」→「マイクロ波」→「ラジオ波RF」などがあり、可視光線より短い波長には長い方から順に「紫外線:UV:Ultra Violet」→「X線」→「ガンマ線」などがあります。

 電磁波は波長が短い方がよりエネルギーが強いという性質があります。紫外線は更に波長の長いものから順にUV-A→UV-B→UV-Cと3種類に分けられており、UV-Cはオゾン層により遮さえぎられて地上には届きません。UV-Bは皮膚表面の「表皮」に吸収されて、表皮に「サンバーン:日焼け」の炎症を起こします。またUV-Bは表皮の一番下にある基底層のメラノサイトを活性化して、メラニン色素の合成を増やし「日光黒子:老人性色素斑:シミ」や「そばかす」が増える原因だけでなく皮膚がんの原因になっています。

 さらにUV-Bより波長の長いUV-Aは表皮より深い「真皮」にまで届くため、真皮内のコラーゲンやエラスチンなどの線維成分やヒアルロン酸という線維間のゼリー状の基質によるお肌の弾力を保つ支持組織を破壊して行き、「しわ」「たるみ」つまり「光老化」を生じる原因となっています。またUV-Aもメラニン色素の増加を促します。

 「日焼け止め:サンスクリーン剤」の強さを示す「PA」はUV-Aの防止効果の強さを表し「+〜++++」の4段階があります。「SPF」はUV-Bの防止効果の強さを示し10〜50程度です。PAとSPFが大きいほど紫外線防止効果も強いのですが、逆に肌への刺激や負担も大きくなるため、日常生活にはSPF10-20, PA++程度を、軽いスポーツやレジャーではSPF30, PA+++程度を、炎天下で長時間の作業やマリンスポーツなどではPA++++, SPF50以上などと使い分けることが勧められています。

 この肌の老化現象だけでなく紫外線は、「目の老化現象」=「白内障」や「加齢黄斑変性」にも関わり、さらにスマートフォンやパソコン、LEDなど最近特に触れる機会が激増している機器の画面から発せられる光に多く含まれる「ブルーライト」「HEV」と呼ばれる青紫〜青色の光が「加齢黄斑変性」の原因に関わっていることがわかってきています。目の老化現象については、またの機会にお話しいたします。


「くすぐる診療所」 (2024/3/20) No.133. 2024年4月号掲載

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