01.「胃がん」の原因は「ピロリ菌」 ~『予防する医療』への意識改革を!その1~
今の日本は高齢化のため「がん」が増え、生活の欧米化から「心筋梗塞、脳卒中」が増えています。しかし、これらの病気は適切な生活・定期的な検査・お薬治療・早期治療により予防できる可能性が高いのです。
「私の家系には『がん』の人はいないから私は『がん』にならない」と誤解している方が多いようですが、本当は「がん」は老化現象の一部として「誰もが」なる可能性を持っています。
がんは種類も多く原因も様々なために、正しい知識を持ち、自分がどのがんになりやすいのか、どのような検査をするべきかを知ることが重要です。
まず今回お話しする「胃がん」ですが、胃がんの原因はほぼ100%近く「ピロリ菌」だとわかってきました。
以前は、胃の中には塩酸という強い胃酸があるために細菌は住めない環境だと考えられていましたが、オーストラリアの医師ウォーレンとマーシャルが胃内に住み着くピロリ菌を発見し、この菌が胃がんを引き起こすことがわかってきたのです。しかし、感染の原因はいまだにわかっていません。
ピロリ菌が胃に入り込み(感染し)、住み着くことで、胃炎が知らないあいだに起こり、長年の慢性胃炎が進行した結果として胃がんが発生してきます。しかし万一、ピロリ菌から胃がんが発生しても、今の時代は小さな早期胃がんの間に発見できれば内視鏡治療により完全に治すことが期待できます。
しかし、症状が出るほどの大きな進行胃がんになってしまうと完全に治すことが難しくなり、命を落とす危険が高くなります。そのため、胃が痛いなどの症状が無くても、自分が「ピロリ菌」を持っているかどうか、慢性胃炎の進行度がどのくらいかという「胃がん危険度」を知り、胃がんの危険性がある人は定期的な「胃カメラ検査」で早期発見したほうが良いと考えられます。
最近、胃がん検診として胃がんの危険度を予測する検査法「ABC検診」を行う自治体も増えているようです。
ABC検診とは、従来の胃のバリウム検査をせずに、血液検査だけで「胃の中のピロリ菌の有無」と「胃炎の程度」を判定して胃がんの危険度を予測する検査法です。その危険度に応じて定期的に胃カメラ検査を行うことは合理的だと考えられます。保険の適応外ですが、数千円位の費用で受けることができます。
また胃カメラの前には、問診票に記入するだけの、簡単な「食道がん危険度チェック」を行い、食道がんの危険度もあらかじめ把握してから検査を受けるとより効果的です。次回はこの「食道がん」についてお話しします。
(「くすぐる診療所」2012年4月号より改訂)