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04.「胃内視鏡検査とバリウム検査の違い」 ~『予防する医療』への意識改革を!その4~

 現在、生涯のうちに2人に1人が「がん」にかかる時代ですが、「私の家系にがんはいないから自分は大丈夫だ」と誤解している方が多く、「がん」は老化現象の一部として「誰でもなる可能性」があると正しく知ることは、心身共に健康な生活を送る上で非常に大切なことです。

 現在、胃がん検診と言えば「胃バリウム検査=胃X線透視検査」が一般的ですが、色々な問題点があり見直されてきています。

 胃カメラが普及したため、この難しい胃バリウム検査ができる放射線技師さんも、写真を読むことができる医者も激減しています。またバリウム検査で早期胃がんを見つけることは、胃カメラで見つけるよりもはるかに難しく、胃がんが見逃される可能性も高いのです。

 実際、「胃変形」や「ひだの乱れ」といった漠然とした異常で検査に引っかかり、胃カメラをしてみるとたまたま別の場所に胃がんが見つかることがよくあります。

 更にバリウム検査は放射線を浴びる検査ですし、バリウムが腸に残って便秘から腸が破れる危険もあるため、検査後は胃カメラよりも危険が大きいと言えます。

 しかし、まだ最初から胃カメラを受けるには抵抗がある方も多いのが事実で、これは今後、鼻からの細い内視鏡や麻酔がもっと改良されて、だれでも抵抗なく楽に胃カメラが受けられるようになると解決される問題だと思います。

 また今では、まるで血液型を調べるのと同じように「ABC検診」の採血だけで、「ピロリ菌の有無」と「胃炎の程度」が判断でき、一人ひとりの「胃がんのなりやすさ」をA,B,C,Dの段階で評価できます。そして、約半数を占める胃がんの危険の低いA群の人は、5年に1度の節目検診の時だけの胃カメラとし、胃がんの危険の高い「B群・C群・D群の人は、それぞれ3年・2年・1年に1回胃カメラを受ける」といったように、その人に応じた頻度で胃カメラを勧めることができると考えています。

 「みんなが毎年胃がん検診を胃バリウム検査で受ける必要はもはやなくなった」と言っても過言ではなく、ABC検診と胃カメラを組み合わせることで、効率的に、行政の費用負担も軽くする新しい胃がん検診ができる時代になって行くと思われます。

*注1) 2014年度版の胃がん検診ガイドラインでは、胃バリウム検査と共に、新たに胃カメラ(胃内視鏡)検査も推奨されるようになりました。

(「くすぐる診療所」2012年7月号より加筆改訂)

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