022.「2014年(平成26年)の新年のご挨拶と昨今の医療の話題」
みなさま新年明けましておめでとうございます。
昨年(2013年:平成25年)はアベノミクスやオリンピック招致決定と言った明るいニュースの一方、近隣諸国との緊張悪化や甚大な豪雨災害、シリアやタイの内乱等々、様々な出来事で目まぐるしく変化する1年だったと思います。
医療の分野では、胃がんの原因「ピロリ菌」の除菌対象が慢性胃炎まで広がり、事実上「ピロリ除菌治療」が解禁されました。また年末には新しいC型肝炎ウイルス治療薬が発売されました。20年前には数%しか治らなかった不治の病「C型肝炎」が90%もの高率でウイルス除去が可能となり、多くの患者さんで肝臓がんの予防が可能となる画期的な治療法の登場です。
さらに京都大学の山中教授のノーベル賞受賞で有名になった「iPS細胞」の臨床応用も現実的になってきました。昨年「加齢黄斑変性」という目の病気で第1号の臨床研究が承認され、今後「心不全」や「脊髄損傷」「パーキンソン病」といった、心臓や神経の病気で臨床研究が始まろうとしています。
なおこのiPS細胞からはあらゆる臓器が作れるのですが、同時にこのiPS細胞から「がん」が発生する危険性も指摘されていて、がんを発生させない技術を確立することが最大の課題とされています。
このように医学が進歩する一方で、年々悪化する少子高齢化のため増大する医療費・社会保障費がますます財政を圧迫し、消費増税と高齢者の自己負担率上昇だけでなく、さらに数年後には高齢者数が約1.6倍に急増するためベッド数が足らなくなり、今のように皆が病院で最期を迎えることができなくなる見込みなのです。
今年の「くすぐる診療所」では今後の医療の動向を踏まえて、自分の最期を自分で選択する「終活」や、高齢者の「胃瘻」などのシビアでリアルな人生と医療の狭間についてもお話させていただこうと思っています。
最後にシルバー川柳より2句をどうぞ。
『延命は 不要と書いて 医者通い』
『介護して ふたたび芽生える 夫婦愛』
病院では様々な人生の縮図が垣間みられます。
(「くすぐる診療所」2014年1月号より改訂)