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034.「2015年(平成27年)-新年明けましておめでとうございます。」2014年の医療関係の話題

 2014年の医療関係の話題をまとめてみました。

 まずiPS細胞の患者さんへの治療応用がいよいよ始まりました。9月に「滲出型加齢黄斑変性」という難病患者さんにiPS細胞から作った「網膜色素上皮細胞」が世界で初めて移植されました。まだ臨床研究の段階ですのでこれから効果や副作用などが明らかにされて行くでしょうが将来性のある喜ばしいニュースです。

 その傍ら日本人が海外の有名な科学雑誌に掲載した「STAP細胞」論文と、「ディオバン(高血圧治療薬)」論文がいずれもデータの改ざんにより取り下げられるという国際的に非常に不名誉な事件もありました。

 まずSTAP細胞に関してですが、ある新たな科学実験の結果が認められるためには「再現性がある」ことが科学の世界では必要です。つまり一度きりの出来事では科学的とは言えず(それは超常現象です)、他人が同じ手順で実験を行っても同じ結果が得られるということが必要なのです。しかしSTAP細胞は結局その後誰も再現実験に成功しませんでした。つまり科学的に正しいと証明されなかった訳です。

 またディオバンという薬のデータ改ざんに関しては、薬の効果を調べる最近の方法は「大規模臨床試験」と言って、多数の患者さんを対象に本物の薬を飲む群と、偽薬(見た目には同じだが薬の成分の入っていないもの)を飲む群に分けて、そのうち何人に薬が効いたかを調べて統計学という数学で「有意に差がある(=薬が有効である)」かを計算します。しかし良い結果を出したいがために、ディオバンという薬の効果があった人の人数を水増しして「有意差がある=薬が有効である」という嘘の結果を世界的に権威のある医学論文雑誌に載せてしまったのです。2

 014年には青色発光ダイオードの発明で3人の日本人がノーベル物理学賞を同時に受賞したという快挙の陰で、このようなモラルに欠けた一部の人のために国際的に日本の科学者の信用がなくなってしまうことは今後二度とあってはなりません。


(「くすぐる診療所」2015年1月号より改訂)

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