128.「目のお話」 その1―視力の障害:近視と遠視、乱視、老眼の関係とは?
皆様は日頃「目の健康」をどれくらい気遣(きづか)っておられるでしょうか?私は10歳頃から近視が進行したため、凹(おう)型の近視用眼鏡(めがね)やコンタクトレンズが必要でした。
「近視(きんし)」や「遠視(えんし)」、また「乱視(らんし)」と言うのは目玉の表面の「角膜」やその奥の「水晶体(すいしょうたい)」という透明で円盤型のレンズの役割りをしている部位による光の「屈折(くっせつ)の異常」です。見たいもののの距離に合わせて、私たちは自然と目の筋肉(=毛様体筋)を引き締めたり(収縮しゅうしゅく)、ゆるめたり(弛緩しかん)して、この水晶体の厚さを分厚くしたり薄くしたりして光が屈折する角度を調節しています。
近視では一番緩(ゆる)めた筋肉の状態でも眼球に対して光が屈折し過ぎた状態に水晶体のレンズが分厚くなっているため近くは見えるのですが、少し遠くのものを見ようとするとぼやけてはっきり見えなくなるのです。
遠視はその逆でレンズが眼球に対して薄い状態で、十分に光が屈折しないため近くのものにピントが合わずはっきりと見えにくいのです。それぞれ逆の屈折、近視では凹(おう)レンズ(マイナスレンズ)、遠視では凸(とつ)レンズ(プラスレンズ)の眼鏡やコンタクトレンズを装着することで見え方が矯正(きょうせい)されます。
「乱視」はこの円盤状の角膜と水晶体の形が歪(いが)んで、ラグビーボールの形の様にいずれかの方向に引き伸ばされた様になる(正確には正乱視)ことで生じます。乱視に対しては引き伸ばされたラグビーボールの縦方向に凹型の円柱レンズを加える(トーリックレンズ)事で矯正できます。
それに対して「老眼(老視)」と言うのは、加齢とともに水晶体が硬くなり「調節力が低下」するために、毛様体筋を収縮して近くを見ようとしても水晶体のレンズが十分に分厚くなってくれないために「近くが見えにくくなる」現象です。近視の人はもともと近くを見ることはできますので、凹レンズの眼鏡を外すか、または眼鏡の度を緩(ゆる)くすることでしばらくの間は老眼の矯正をすることが可能です。私も最近は、近くの物が見えにくく老眼だと自分でも感じているのですが、もともとが近視ですので眼鏡を外すと目の前10-15cmくらいの物がはっきりと見えるようになり、眼鏡をかけると10-15cmの物はぼやけて見えなくなり40cmくらい離すとようやくはっきりと見える様になります。
この様に「老眼=老視」は遠視に近い状態で、近視用凹レンズの眼鏡の度数を落とすか眼鏡を外(はず)す、あるいはもともと目の良い人であれば虫眼鏡のような凸レンズを使う事で、より近くの物が見える様になってくるのです。しかし凸レンズでは逆に遠くは見えにくくなります。この様な物理的なお話は、図を使って説明しないと、なかなか文字だけでは伝わりにくく難しいお話でしたね。
次回は高齢者にとって多い目の病気、「白内障」や「緑内障」、「加齢黄斑変性」という病気と、それらの病気の原因と考えられ、さらには「老化」の原因として注目されている「活性酸素」と「酸化ストレス」についてお話しする予定です。
「くすぐる診療所」 (2023/06/23) No.128. 2023年07月号掲載