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05.「口からの胃カメラと鼻からの胃カメラ検査の違い」 ~『予防する医療』への意識改革を!その5~

 現在、「胃バリウム検査=胃X線透視検査」は、検査を行う放射線技師も、それを読影する医者も減少しており、より早期の胃がんを見つける検査としては胃カメラ検査の方が優れています。

 しかし胃カメラ検査は「苦しい検査」として敬遠されてしまうため、最近ではより細いカメラを鼻から入れて検査する「経鼻内視鏡検査」が検診で普及してきています。

 鼻の穴が細かったり曲がっていたりすると、鼻血が出たり鼻が痛いなどのつらさがありますが、多くの方では細い経鼻内視鏡の方が太い経口内視鏡よりも楽な検査であることは事実です。

 しかし経鼻内視鏡にも大きな欠点があります。

 経口内視鏡よりも画質が悪く見えにくい、カメラが操作しづらく、結果的に小さな胃がんを見落とす危険性が高いということです。

 プロの内視鏡医からすると、画質の悪い携帯カメラを使うプロカメラマンの気持ち、または、刃の欠けた包丁を使うプロ料理人の気持ちといったところでしょうか。

 「弘法筆を選ばず」とは言いますが、全ての内視鏡医が「弘法」であるわけではなく、やはりより高画質なカメラで見た方が詳しく見えることは言うまでもありません。

 現時点の改善策としては、経鼻内視鏡の画質の改善か、または経口内視鏡をより楽に受ける工夫ですが、すぐにできることは後者です。

 経口内視鏡を楽にするためには、しっかりとした「のど」の麻酔、丁寧な胃カメラ操作、緊張をほぐす声かけなどがあります。それでもしんどい場合には、点滴により半分眠りながら行う「鎮静=静脈麻酔」を行う方法があります。これによって、「寝ている間に検査が終わっていて全く覚えていない。」くらいに楽に検査が受けられます。

 ただし麻酔は数時間残るために、検査後は終日車両の運転は禁止しています。また、頭がぼーっとしたり、フラフラするため、付き添いの人とともに帰宅してもらう必要があります。

 どのような方法で検査するのが良いかは、主治医や検査医とよく相談して下さい。

 より自分に合った方法で定期的に胃カメラ検査を受け、もし早期胃がんになったとしても小さなうちに見つけて取ることをお勧めします。

(「くすぐる診療所」2012年8月号より改訂)

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