013「すい臓がん」 ~『予防する医療』への意識改革を!その12~
すい臓がんは、肺・胃・大腸・肝臓に次いで5番目(注3)に多いがんで、毎年約3万人近い方が亡くなっておられ、近年増加傾向です。
実際、日常的にも40~50代の比較的若い方から、80代のご高齢の方まで幅広い年代で多く膵臓がんが見つかります。
食道、胃、大腸がんと異なり、膵臓がんは早期発見が非常に難しく、症状が出てからでは8割以上の方がステージⅣの最終段階であり手術ができず、抗がん剤治療をしても1年間生きられる方は26%、3年では3%と非常に予後の悪いがんです。
これまで他のがんの場合でも説明しましたが、「がんは症状が出てからでは遅い」ことが多いのですが、みなさん症状がないとなかなか病院を受診されないのが現状です。早期発見のためには1cm以下の症状のほとんどない段階で見つけるべきだと言われていますが、これは通常の検査で見つけることは困難で、まずすい臓がんになりやすい人をしぼり込む必要があります。
近親者で膵臓がんのおられる方、糖尿病のなり始めや急に糖尿病が悪化した方、アルコール多飲や総胆管結石(胆石の一種)で慢性膵炎になっている方、肥満、喫煙などが膵臓がんの危険因子と分かっています。
このような危険因子をもっておられる方は、症状が無くてもすい臓がん精密検査を積極的に受けることをお勧めします。すい臓全体を診る精密腹部エコー検査・MRCP(膵臓・胆道に的をしぼったMRI)検査で、すいのう胞(水の溜まり)や膵管拡張などが見つかると更なる精密検査へと進みます。
更なる精密検査とは超音波内視鏡やERCPによる膵臓の細胞診検査で、これらは消化器内科医でも特に膵臓を専門とする医師でないと上手く行うことができない難しい検査法です。
先に挙げた危険因子のある方はまず腹部エコーやMRCPといった精密検査を受けることを考えてみて下さい。
*注3) 2016年の国立がん研究センターのまとめたがん登録統計では、男女合わせた順位は以前と変わり、1位肺がん、2位大腸がん、3位胃がん、4位膵臓がん、5位肝臓がんとなりました。2016年の膵臓がんの死亡数は、男性17060人、女性16415人、合計33475人と3万人を突破し、この文章を書いた2013年当時よりも更に増えてきています。(「くすぐる診療所」2013年4月号より改訂)