014『今、医療の現場で何が!』その1「社会の歪(ひず)みが医療の歪みに直結する」
私の連載も開始から1年が経ち、多くの反響をいただくようになりました。
『予防する医療』への意識改革を!と題して、「がん」をいかに「予防」し、「早期発見・早期治療」するか?ということから始め、心筋梗塞・脳梗塞を引き起こす「動脈硬化」の原因となる肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病・タバコなど「メタボリック・シンドローム」についても取り上げました。
「医学」の進歩と共に多くの病気の原因・治療法・予防法が科学的に解明されつつあるのですが、まだまだ未解決の問題の方が多いように思います。
また「医学」が病気を科学的に扱う学問なら、「医療」というのは更に広く皆さんの健康を「医学」の知識・技術を用いて社会制度の中でどのように保証するかという意味を含みます。
しかし近年「医療崩壊」と言われているように、この「医療」の現場で社会的な問題が噴出してきています。これまでの戦後日本は国民皆保険という世界で最も手厚い医療が受けられる国であり、そのため世界一長寿な健康国でした。
しかし「医療」というのは皆さんの「健康」、「命」に直結し、全ての社会生活と何らかの関係があるため、今の社会のひずみが直接医療制度のひずみとなり「医療崩壊」という言葉で表現されています。
例えば、過重労働といった労働問題、食品衛生問題、大気汚染や紫外線などの環境問題、少子高齢化問題、感染症対策問題、そして何より医療経済問題等々、様々な社会問題が医療の現場を混乱させ、疲弊させている現実があります。
そのため社会全体でこれからの医療制度の再構築を真剣に考える時期に来ていると思います。今後折にふれてこの「今の日本の医療の問題点」をクローズアップして行きたいと思います。
最期に最近流行りの「シルバー川柳」から一句、
『長生きを するなと政府に 仕分けされ』 (68歳男性) (注4)
軽妙な笑いを誘う句々の中で、一瞬不意をつかれて社会の現実を目の当たりにする思いがしました。
*注4) 2010年度の予算編成のために当時の民主党政権が取り入れた「事業仕分け(行政刷新会議)」は、当時のテレビニュースでもよく放映され話題となった。元ニュースキャスターの蓮舫(れんほう)参議院議員がスーパーコンピューター開発事業の仕分けの際に「(世界で)2位じゃダメなんですか?」と文部科学省と理化学研究所を相手に突っ込んだ発言が有名です。(「くすぐる診療所」2013年5月号より改訂)