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015.『予防する医療』への意識改革を!その13「乳がん」

 最近のニュースで、ハリウッドの有名女優アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査を受け、乳がんになる確立が87%と宣告されたため、健康な乳房を両方とも切除した後に整形したことが話題になりました。
 彼女の母親は若くして乳がんにかかり、後に卵巣がんも併発して亡くなったために、彼女も3000ドル(約30万円)以上かけて自費で遺伝子検査を行い、数百万円の入院・手術を受けたのです。
 
 具体的にはBRCA1/2という遺伝子の異常(変異)があると「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」といって、乳がんと卵巣がんになりやすいことがわかっています。この遺伝子は優性遺伝といって2分の1の確立で子どもにも遺伝します。それも男女関係なく、母親だけでなく父親に遺伝子異常がある場合でも、娘にも息子にも同様に2分の1の確立で遺伝します。

 この遺伝性乳がんは、乳がんの全体のうち5-10%ほどと少数派ですが、この遺伝子異常があると男性でも乳がんになることがあります。
 現在日本人の女性がかかる「がん」の中では乳がんが第1位で、死亡数では第5位です。ちなみに女性のがん死亡の第1位は以前にも書いた「大腸がん」です。
 かかる人が一番多いのに亡くなる人数は5位という違いは何故でしょうか?これは日本でも「ピンクリボン運動」として乳がん検診が推進されており、主に「マンモグラフィー」というレントゲンによる検査が普及してきたために、大腸がんに比べると早期発見されて治る方が多いことを示しています。
  

 しかし、欧米とくらべるとまだまだ日本での乳がん検診の普及は遅れているため、欧米ではすでに減少傾向にある乳がんですが、日本では今でも増加しています。高額の遺伝子検査を受けることは大変ですし遺伝子検査が今後普及するかどうかは倫理的な問題も含めて議論の余地がありますが、一般的な乳がん検診は是非とも受けていただき、ご自身の健康を確保していただきたいと思います。

(「くすぐる診療所」2013年6月号より改訂)

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