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09.「子供の腕が・・・」肘内障〜救急疾患編その1

 ある夜の出来事…、我が家の3歳の次女が布団の上で得意のでんぐり返りをしたとたん突然泣き出しました。右腕を下に垂らして腕があがりません。色々となだめても一向に泣き止まないばかりか、「痛い、痛い」とますます大きな声で泣きじゃくります。

 こんな場合、親ならだれもが動転してしまうのではないでしょうか?夜間救急外来に電話しても「小児科はいない」「整形外科はいない」と断られる可能性も高いと思われます。

 幸い私は以前にこのような小児を救急外来で診たことがあったので、冷静に対応できました。

 まず上腕、いわゆる二の腕を丁寧に触ってみて変形していないか、痛がる点がないかを確認しましたが、これらは無いようでした。
 肩も変形はなく外れていないようでした。
 最後に子供の肘(ひじ)を片手で持ち、もう片方の手で子供の手のひらを持って、肘を曲げて胸の前に手を持って行き、「アイーン」とするように手のひらを内側から下に向ける方向に肘から先を回転させると、肘に”コリッ”という感触を感じるとともに子供は泣き止み、腕をいつもの通りに動かせるようになりました。

 これは2-4歳頃の小児の腕を急に引っ張った時などに起こりやすい、「肘内障(ちゅうないしょう)」という「肘(ひじ)の亜脱臼(あだっきゅう)」です。

 子供が急に泣き出し、腕を痛がり挙げられなくなるため「肩が外れたのでは?」と考えがちですが、実際には肘の関節が不完全に脱臼した状態をいいます。
 子供の腕を急に引っ張った時におきやすいのですが、整形外科医や整体師などは比較的簡単に整復して治します。

 注意すべき点は、転んで腕をついた時などには上腕の骨折をしていることもあるため、無理に自分で治そうとはせずに冷静になって専門家を探すようにしましょう。肘内障なら後遺症なく治ります。
 ある程度成長するまでは癖になり繰り返す小児もいますが、ある程度成長すると肘内障は起こらなくなるのであまり心配しなくても良いでしょう。


(「くすぐる診療所」2012年12月号より改訂)

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