011.「肝臓がん」その1「肝炎ウイルス」 ~『予防する医療』への意識改革を!その10~
肝臓は、「肝心要(かんじんかなめ)」、「肝(きも)に銘(めい)じる」など、「大切な臓器」として古来から認識されてきました。
現在、日本人の死因で「がん」が第1位(約30%)ですが、内訳は男性では肺・胃・大腸・肝臓・膵臓の順で、肝臓がんは第4位です。
女性では大腸・肺・胃・膵臓・乳房・肝臓の順(注2)で、肝臓がんは第6位です。
このように肝臓がんは非常に多いがんの1つで、全国で年間約2万1千人の方が肝臓がんで亡くなっておられます。
しかし、肝臓がんの原因のほとんどは「肝炎ウイルス」の感染によることがわかっています。
肝炎ウイルスは、現在AからG型がありますが、このうちB型とC型は血液を介して感染し、慢性肝炎を引き起こすことが多いウイルスとして有名です。
専門的な話になりますが、このB型肝炎とC型肝炎はウイルスの種類としては異なるタイプのウイルスで、その特徴もかなり違います。
いずれのウイルスも、血液を介して感染し一部の人で急性肝炎を発症しますが、その後ウイルスが体内に居続ける場合には、血液検査で肝臓の数値がずっと高い「慢性肝炎」が持続する場合と、肝臓の数値は正常だがウイルスが体内に居続ける「無症候性のキャリア」といわれる状態に分かれます。
慢性肝炎は通常の血液検査で、肝臓の数値が正常値よりもやや高い値が続くことが特徴で、次第に肝硬変、肝臓がんへと進行して行きます。
対して無症候性キャリアの場合は肝臓の数値は正常でほとんどの場合何事もないのですが、知らない間に慢性肝炎になったり、肝臓がんができている場合があるため、やはり注意が必要です。
ウイルスが体内にいるかどうか、過去にウイルスに感染したことがあるかどうかは血液検査で何種類かの「ウイルス抗体」を計ることでわかります。
自分が肝炎ウイルスを持っているかどうか知らない人が多く、知らない間に慢性肝炎や肝臓がんを発症している患者さんをよく見かけます。是非一度B型肝炎、C型肝炎ウイルスの抗体検査を受けてみましょう。
*注2) 2016年の国立がん研究センターのまとめたがん登録統計では、女性のがんの死因で膵臓がんが第3位、胃がんが第4位と順位が入れ替わりました。
(「くすぐる診療所」2013年2月号より改訂)